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[SS]江島愛美の設定? [story]

むかしむかーしに書いていた愛美の設定風なSSが出てきましたので、転記します。

「この辺りもすっかり変わってしまいましたねぇ。昔は緑多かったのに今じゃ神宮の杜だけですからね」
「もう開店してから15年にもなるんじゃ、仕方なかろう」

そういいつつ、初老の男性は肩に積もった雪を払っていた。

「……あの席も今日が最後じゃな」

彼の視線の先には、椅子が2脚と丸いテーブルがあった。
テーブルの上におかれたオルゴールは予約の入っている印だ。

「あれから12年にもなるんですね……」
「あぁ、連絡を受けた時には正気か?と聞いたもんじゃ」

彼女はカウンターに座った彼の前に珈琲を置いた。

「あの子は顔を近づけて不思議そうに見るんですよ……青い砂が落ちるのを」
「それを、あいつが支えておるんじゃ」

二人とも遠い目をしていた。

「……久しぶりにならしてみるとするか」

ゆっくりと窓側に歩くと、彼はテーブルの上からオルゴールを手に取り、ねじを巻き始めた。


年末年始――忙しい生徒会役員にも、ようやく少しばかりの長期休暇がやってくる。
愛美は久しぶりに名古屋の実家に帰っていた。
去年もそうだったが、年末は母と買い出しに出かけたり、おせちを作ったりしてゆっくりと過ごす。
そして、年が明けると元日の昼には初詣に出かける。
神社仏閣が好きな愛美の一年は、初詣に行かないと始まらないのだ。
今年ももちろん出かけていた。珍しく雪が降っているが、構いはしない。

(やっぱり、熱田神宮はいいわね~。草薙剣がご神体だし)
ご神体と何の関係があるのかはわからないが、彼女は昔から熱田神宮が好きだ。
(あ! かわいーーーーーーーーーー!)
小さな女の子が着物をきてよたよたと歩いている。
(蒼明学園に持って帰れたらなぁぁぁぁ)
おい。
世話をする人の数を自分から増やしてどうする。

込み合う賛同を押し出されるようにして通りながら露店を見る。
リンゴあめ、チョコバナナ、わたがし……
おっと、露店を見ているうちに、愛美が地下鉄の入り口を通り過ぎてしまったようだ。

(歩いていこうかな)
歩くことは別に珍しいことではない。
神社巡りの好きな愛美にとっては、ごく自然なことだ。
(だいぶこのあたりもかわったのね……)
愛美が小学生の頃は、この辺りにもまだ自然が色濃く残っていた。
だが今は、木造の家や寺を見ることはめったにない。
「ん?」
……説明しているときに見つけなくてもいいじゃないか。
愛美が見つけたのは木造の家だ。
しかも、木造であることをわざわざ見せつけている様子がまったくない。
つい最近のレトロブームにのっかったわけではなさそうだ。
「喫茶店か……」
暗く落とされた照明が、窓からこぼれている。
のどが渇いているわけではないが、なぜかこの中に入りたかった。
(懐かしい風が聞こえる……)
その風に誘われ、愛美は扉を開けた。
(?! これは、何の!!!!)
愛美の鼻が何かの香りをとらえた。コーヒーや紅茶の香りとは違う別の何かを。
(つい、最近も似たような……)
「いらっしゃいませ」
老婦人の声に愛美の思考は中断された。
案内があるわけでもなく、自分で席を選ぶ。
どこにしようかと考えることもなく、愛美は窓側のオルゴールに向けて歩き出した。

「申し訳ありません。お客様、その席は予約が……」
「いや、お待ちしておりましたよ。そちらの席にどうぞ」

初老の男性は、婦人の声を遮ると愛美にその席へ着くよう案内した。
小さくはあるが凛とした声に、愛美はなぜだか安堵していた。

(いったい、どういうこと?)

最近よく味わうようになった感覚だ。

「いったい何がどう……」
「おぉっ、そうじゃった! これを聞いてみんかね」

自分の言葉が遮られた愛美は、サングラスの奥から主人をにらみつけた。
主人はまったく意に介さず、オルゴールを鳴らす。

♪~~~

(さっきの風が聞こえたのはこれね……懐かしい、風……懐かしい?!)

愛美は真剣な表情で辺りを見回した。
さっきの香りは初めて<塔>に行ったときにも感じた香りだ。
この風も<塔>に流れているものに似ている。

「そんな怖い顔せんでも。せっかくのべっびんさんが台無しじゃって。どうかなさったのかね?」
「……いえ、なんでもありません」
「失礼いたします」

まだ頼みもしていない飲み物が運ばれてきた。

「この砂時計の青い砂が全部下に落ちたら、ゆっくりと葉を沈めてお飲みくださいね」
「イングリッシュミルクティーじゃよ」
「確かに、私は紅茶が好きですが……」
「メニューを見てもあなたが頼みなさるのはこれじゃよ」

相変わらず、彼は愛美を見ていた。
婦人もミルクティーを持ってきたまま、彼のすぐ隣にいる。
あたたかな目線で。
だが、愛美の目は砂時計に向かっていた。

<ずっとずっと前……これを見たことがある……ここに来たことがある……?!>

「そろそろいい時間ですよ。飲んでみてください」

彼女の言葉に愛美は我に返った。砂時計の青い砂はすっかり落ちていた。
ゆっくり葉を沈め、カップにそそぐ。
ふと思い立って、愛美は砂時計を逆さにした。
青い砂が落ちるのを食い入るように見続けたが、それ以上何も思い出すことはできなかった。

「あなた、そろそろこれを片付けませんと」
「あぁ、そうだな。最後に、あの子が来てくれて予約の意味があったな」

ジリリリリリリリ……
最近にしては珍しい黒電話が音を立てた。

「はい、喫茶……お前、元気にしてたのか!?」
「今日、あの子がきたぞ!」
「知ってるのか? え? そうか……いや、うん。わかった。あぁ。わかったよ」

ガチャ。
「片付けなくてよくなったぞ。2年間の予約延長じゃ……」
婦人は微笑みながら、元あった位置にオルゴールを置き直した。
「12年前もこんな天気でしたね」
「そうじゃったな、12年分の予約には面食らったもんだ」
彼は少し間を置いた。
「あの子には何も知らされておらんようじゃな」
「世の中には知らないほうが幸せなこともあるでしょう。」
「確かにそうじゃ。じゃが、それは当事者でないものが事実を知っているからこそ、言えるものなんじゃよ」
「あなたは、このままでは済まない……と?」
「あぁ、あの子は事実を知りたがっておるじゃろう。あいつがいなくなった理由も、自分が能力を持っている理由も。そして、その事実にうすうす感じてもおるんじゃろう」
「怖いでしょうに……小さな肩にこんな重荷を……」
婦人の目はかすかにうるんでいた。
「あの子は自分を高めてさみしさを乗り越えようとしておる。いや、乗り越えられると信じておるんじゃよ」
主人は婦人の肩に手を置いた。
外ではただただ雪が降り積もっていた。
「あの子の生きる道じゃ。あの子自身が好きなように生きればいいんじゃよ」
(たぶん、あいつもそれを望んでいるはずじゃて……)
彼は心の中で付け加えながら、降りしきる雪を眺めていた
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